2021年より読売ジャイアンツでプレーすることになった梶谷隆幸選手。
原監督からの熱烈なラブコールもあり、新天地へ旅立った一人の生え抜きのスターを横浜DeNAベイスターズファンは今年もまたその背中を見送ることとなりました。
ベイファンの中では特に生え抜きで思い入れのある筒香嘉智選手、石川雄洋選手とも肩を並べる存在感を見せつけていた男の魅力を綴っていきたいと思います。
●選手情報
1988年8月28日、島根県松江市出身。身長180cm、体重88kg(ベイスターズ入団時)。
進学校としても名高い開星高校より2006年高校生ドラフト3巡目で横浜ベイスターズ入団。
当時の逸話として、本人が県庁職員である父に契約金を渡す際に自分の退職金として預かってほしいと言ったといい、当時から自分に対して客観的な視野を持っていることが伺えます。
入団時は内野手での登録であり、数年ファームで経験を積んだ後の2009年4月9日に一軍初出場となります。
極めて高い身体能力を誇っており、特に走塁は50mを5.9秒で駆け抜ける俊足を持ち、トリプルスリーに最も近い男としても期待されていた一人でもありました。
しかし内野守備は決して評価されるとは言い難く、ファンの間でも語り継がれる「ちょうちょ事件」など一軍での大事な場面で凡ミスすることがあり、悪い意味でも目立つ存在になってしまいました。
梶谷選手を語る上で外せない年号が2013年であります。
前述の通り目立つ存在となっていた梶谷選手は、2013年4月9日の広島カープ戦で起こった「ちょうちょ事件」によってファームへ落とされることとなってしまいました。
しかし同年8月、正式に一軍復帰すると打撃が覚醒。
それまでゴロや三振と打撃が今一つといったイメージがファンの間では付いていたのですが、ホームランやフェンス直撃の2塁打を量産。シーズンが終わってみれば、77試合ながら打率346. ホームラン16本 盗塁7と素晴らしい記録を打ち立てたのでした。
当時はまだ筒香選手が1軍と2軍を往復しており、打線はモーガン選手、ブランコ選手、ラミレス選手、中村(紀)選手と油の乗った重量打線の層に厚みが増した形となり、ファンは生え抜き選手の覚醒を心から祝福しました。
その後、2014年より背番号も3へと昇格となり、外野手へと転向し持前の強肩を活かしUZRも大きく向上。同年盗塁王を獲得したことも彼のキャリアの中での大きな実績の一つとなりました。
●特長
梶谷選手の特長は、肩の強さと盗塁成功率、そして強いアッパースイングです。
肩の強さは2014年の外野手への転向以降、ライトにおいて強肩ぶりを発動することがしばしばありました。
持前の俊足が発揮されていたのも事実でしたが、2019年には強肩の代名詞ともいえるライトゴロでバッターを封殺しました。
盗塁成功率は本人も強く意識しているポイントであり、盗塁数よりも盗塁成功率を高めることに意識を置いています。現に盗塁王を獲得した2014年から2020年までの間にセリーグ盗塁成功率ランキングでも5度のトップ10入りを果たしています。
そして最後の強いアッパースイングについてだが、まるでゴルフスイングの様な打法で、まるで軽く振ったようにライトスタンドへ叩き込むスタイルが印象的です。
しかしその分三振も多く、ベイスターズの歴代三振率ランキングで2017年の梶谷選手が三振率.307で堂々1位を記録しています。正直511打数157三振は驚異的な記録です。
このアッパースイングからの三振は、一部のファンからは気のないスイングと揶揄され、ツーストライクで追い込まれた後、変化球に手を出してしまうとしばしば観客席では話題となってしまっていました。
●今後への期待
2020年の梶谷選手は、それまでの暗闇の数年を吹き飛ばすかのような活躍を見せてくれました。
109試合で打率.323、得点88はセリーグ最高値、本塁打19、盗塁14と文句のない数字でしたが、特に印象的だったのは逆方向へのコンタクト率でした。
彼は持ち味である強いスイングによる引っ張りが多い傾向でしたが、2020年はボールに逆らわない逆方向へのスイングも活用し、結果的に高い打率へ結びつけることが出来たのです。
本人もインタビューで2020年は自分のスイングを掴んだとコメントしており、新天地ジャイアンツでも右へ左へと広角に打ち分け、その自慢の俊足で相手を翻弄してほしいと願います。
ベイスターズを去ることが発表された日、ファンはとても落胆しました。
前年に筒香選手が退団し、山崎選手も不調だった為、ファンが誇るチームの中心選手がこれ以上いなくなってほしくないという思いからのものでした。
しかし、本人のチャレンジしてみたいという強い気持ち、ファン感謝デーで移籍こそ発表されなかったが、イベントにちゃんと登場して誠心誠意対応してくれたことがブーイングではなく背中を押してあげようという気持ちにファンを変えていってくれたのです。
今年5月の試合で投手エスコバー選手のスピードボールに手を出し、ピッチャーゴロに倒れた際にも、エスコバー選手が笑顔でベンチに戻る梶谷選手のお尻をグローブでポンと優しく叩いていたのがとても印象的でした。
ファンからもチームからも愛される人徳者が、いつの日かコーチとして横浜スタジアムに戻ってきてくれることを切に願っています。
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