現在の日本プロ野球における守備職人といえば誰、と聞かれた時、多くの方が思い浮かべるのは広島東洋カープの菊池涼介内野手ではないでしょうか?
国際大会でもその高い守備力を遺憾なく発揮し、国内だけでなく海外でも称賛される守備力の秘訣は一体何なのでしょうか?
今回は、菊池選手の守備に関するデータも参考にしながら解き明かしていきたいと思います。
1.菊池選手のすごさは守備範囲の広さ
まず、菊池選手の守備率を見ていきましょう。
以下は、菊池選手の過去5年間の守備率です。
2015年 .988
2016年 .995
2017年 .993
2018年 .996
2019年 .984
なお、2019年のセリーグ守備率トップは中日ドラゴンズの阿部寿樹内野手の.995となっており、菊池選手は4位となっています。
これだけ見ると菊池選手はずば抜けて守備力が高いとは思えませんが、これは守備率の計算方法が本来の守備力を測るためのものとなっていないからです。
というのも、守備率の計算式は
(刺殺数+補殺数)÷(刺殺数+補殺数+失策数)=(刺殺数+補殺数)÷ 守備機会
となっており、式が複雑なので簡単にまとめると、普通にアウトにできそうな打球をアウトにした割合が守備率ということです。(厳密に言うと少々異なるのですが、ここでは話をわかりやすくするために簡単にしておきます)
つまり、守備率で測ることができるのは簡単な打球を正確に処理する能力であり、守備範囲の広さが表れることはありません。
むしろ、普通の選手が追いつかないような難しい打球に追いついてしまったがためにエラーをして守備率が下がることだってあります。
守備率の問題点を解消してくれる指標として、RF(レンジファクター)があり、これによって選手の守備範囲の広さを測ることができます。
菊池選手の過去5年間のRFは以下の通りです。
2015年 5.65
2016年 5.90
2017年 4.99
2018年 5.15
2019年 4.70
最近は故障の影響もあってか数値がやや低くなっていますが、それでも5.0を超える数値は球界屈指のものであり、2015年より前には6.0を超える非常に優れた数値も記録しています。
ここまでの話をまとめると、菊池選手は守備範囲が広く難しい打球にも追いつくことができ、普通ならヒットになる打球をアウトにしてチームに貢献しているにも関わらず、難しい打球を処理する場面が増えることによって、結果的に失策の可能性が高くなり、守備率は低くなる傾向にあるということになります。
では、その菊池選手の守備範囲の広さは一体何なのでしょうか?
2.菊池選手の守備範囲が広い理由
まず一つ目の理由として挙げたられるのは、ポジショニング能力の高さです。
菊池選手は打者を観察しながら感覚でポジショニングしているという趣旨のことを語っており、優れた観察眼を持っていることがわかります。
また、菊池選手の普段の守備位置は一般的な二塁手と比べて後ろになっている傾向があり、これは肩の強さや捕ってから投げるまでのスピードが他の選手と比べて優れているからこそできることです。
2つ目の理由としてあげられるのは、身体能力の高さです。
肩の強さや捕ってからの投げるスピードが優れているという点は先ほども紹介しましたが、それに加えて菊池選手は足も速く、50mを5秒9で走ることができると言われており、このスピードを生かして普通の選手では届かないような打球に追いついているのです。
つまり、菊池選手は身体能力を生かして一般的な守備位置より後ろに守っており、さらに足も速いため、必然的に守備範囲が広くなるのです。
3.まとめ
•菊池選手のすごさは守備範囲の広さにある。
•守備範囲の広さを支えるのは、誰もが羨むような身体能力の高さ。
メジャーへの挑戦は叶わず、カープに残留することになった菊池選手ですが、今シーズンもその高い身体能力を生かして、守備でも、打撃でも、さらなる活躍を見せてくれるのではないでしょうか。
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